研究課題
アレルギー性疾患における環境と遺伝の相互作用の解明によってオーダーメード予防法を新たに提示するために、本年度では、気管支喘息症およびスギ花粉症における好酸球関連蛋白であるInterleukin 4受容体α鎖(IL4RA)およびCC chemokine receptor (CCR) familyの遺伝子多型を健常者と比較した。さらには総IgE値や特異的IgE値との関係を調べることで、気管支喘息の難治化やアレルギー症の合併の病態機序の解明をも目的とした。対象は、気管支喘息症の難治群である重症8人、非難治群として軽・中等症の16人、これらの対照としての健常者24人の3群と、スギ花粉症178人とその対照の健常者178人の2群である。相関解析の結果、難治群および非難治群のIL4RAの150のアレル頻度は、対照群に比べ有意に高かったが、難治群と非難治群では有意な差は認められなかった。-3223Tにおいても同様の結果であった。CCR family遺伝子多型と気管支喘息症との間に有意な関連が認められたのは、CCR3のT51Cであり、非難治型の51Cの頻度が、対照群に比し有意な高値を示したが、難治群と非難治群の間には有意な差は認められなかった。IL4RAのI50Vの多型ごとに総IgE値の値を比較したとき、I/I、I/V、V/Vの順に有意に低下していた。また、花粉症におけるIL4RAのI50とCCR3の51Cの頻度が有意な高値を示した。以上の結果から、IL4RAやCCR3遺伝子は総IgE産生には深く関わり、環境アレルゲンに対する感作の過程に影響を与えていると考えられ、アレルギー共通遺伝子として捉えることができる。しかしながら、これらの遺伝子多型は気管支喘息症の難治性を決定するものとは考え難く、難治化においては、IgE産生を含めたアレルギーの機序の中のInduction phaseの役割は少ないと考えられた。
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