本研究は、食品由来物質の発がん抑制メカニズムを、発がんに至る各段階において総合的に解明し、効果的で安全な発がん予防法を開発することを目的とする。食品由来物質として、トマト由来リコペン、緑茶カテキン、ビタミンC、ビタミンE、バニリン、シナモン、大豆抽出物を選び、下記の5つの目的について研究を進めている。 1.突然変異抑制機構の解明(主に自然発生突然変異) 2.ゲノムの不安定化抑制メカニズムの解明 3.DNA修復能への影響 (1)コメット法 (2)DNA修復関連遺伝子の発現定量 4.細胞増殖機構への影響 (1)シグナルトランスダクション (2)アポトーシス 5.エピジェネティックな影響評価 平成17年度では、トマト由来リコペンに重点を置き、目的1および3(1)について完了させた。その結果、リコペンはdeletionタイプの自然発生突然変異を特異的に抑制し、またformamidopyrimidine DNA glycosylase (Fpg)で認識されるpurineへの酸化ダメージを特異的に抑制していることが明らかとなった。現在本補助金により購入したリアルタイムPCRシステムを用い、3(2)についてDNA修復関連遺伝子発現定量測定法の確立を進めている。他の食品由来物質を用いて1の突然変異抑制試験および3(1)を行ったところ、すべての物質が突然変異抑制効果を示した。ビタミンC、ビタミンEはリコペンより強力にFpgで認識される酸化ダメージを抑制したが、茶カテキンは抑制しない結果を得た。2のゲノムの安定化については、対応マーカーの選出を終え、種々の食品由来物質で処理した細胞からゲノムDNAを抽出している。さらに、4(2)について、アポトーシスの測定方法の確立を終え、食品由来物質の影響について調べる準備ができている。
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