研究概要 |
1)61名の周産期女性を継続して質問紙調査および生理学的測定、遺伝子検索をした。マタニティブルーズ発症者(BM)は、妊娠期および産褥期のEPDS得点が高得点であった。妊娠期の抑うつ状態はMBと関連しており、妊娠期の抑うつ状態からMBできることが示唆された。 2)副交感神経活動は、MBおよび産後うつ病ともに活動が限弱する。しかし交感神経活動は産後抑うつ状態においてのみ活動が亢進する傾向が見られた。 3)妊産婦が出産後に生じると予期したワーク・ファミリー・コンフリクトの程度が、妊娠期の女性の抑うつとおなかの子供への愛着に及ぼす影響を明らかとなり、ワーク・ファミリー・コンフリクト支援を周産期女性に位置づける必要がある。 4)産褥期うつ病群(9/77)およびMB群(15/77)を対象としたゲノム解析を行った。5-HTR2A,3A,3B,BDNFを選択した関連解析では、有意な所見は得られなかった。サンプル数を拡大し、候補遺伝子も追加した解析と、人格、養育体験等を加味した解析を行う予定。 5)対照群としての一般健常家族における父-母-子3者の相互作用に関する研究を実施し、1歳半の子どもと父母の相互作用を評価する際に重要な指標に関する知見が得られた。 6)性差を加味した精神障害のゲノム解析を行い、5-HT2C受容体遺伝子は女性の統合失調症とのみ有意な関連が検出された。Alpha-synuclein遺伝子とGlutathione S-transferase M1遺伝子は女性の覚醒使用障害と有意な関連が検出された。 7)子どもの重篤な自殺企図は、女児に多く、うつ病に罹患し、家族関係が悪く、自殺企図を繰り返しやすい傾向にあることが判明した。 8)一般正常群(非臨床群)の子どもの解離傾向に男女差は認められないが、男子では母親が過保護であること、女子では父母ともに一貫性のない養育態度を示していることが解離傾向の高さと結びついている。
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