研究概要 |
1)300名の周産期女性を縦断的に、エジンバラ産後うつ病自己評価表(EPDS)、マタニテイ・ブルーズ質問紙PBI;(Parental bonding instrument), Bondingスコア、さらに、このうちの61名に自律神経活動測定、および血清中抑うつ関連物質の測定を妊娠末期、産褥5日目、および産後1ヶ月に行った。 2)マタニティブルーズ発症者(BM)は、妊娠期および産褥期のEPDS得点が高得点であった。妊娠期の抑うつ状態はMBと関連しており、妊娠期の抑うつ状態からMBできることが示唆された。 3)61名の女性を対象に副交感神経活動は、MBおよび産後うつ病ともに活動が限弱する。しかし交感神経活動は産後抑うつ状態においてのみ活動が亢進する傾向が見られた。 4)61名の女性の血清中物質とEPDS抑うつスコアとの相関関係をスペアマン係数を用いて測定した。 EPDSスコアと正の相関関係を示した物質は、TSH, DHEA, IL-1, Biopterinであった。 EPDSスコアと負の相関関係を示したものは、T3, T4, TNF, BDNF, GDNFであった。 妊娠期と産褥期でその相関傾向が一定しないものは、MHPG, Prolactin, Cortisol, IL-6であった。 5)BDNFおよびGDNFについては、EPDSスコアにより陽性群と陰性群に分類すると、両群の間に有意な差異が存在し、これら神経成長因子の抑うつ群での低下を確認した。しかも、このBDNFおよびGDNF神経成長因子の血清中濃度の低下は妊娠期から抑うつ群の女性に存在した。 6)EPDSとPBIの関係では、抑うつ群では母親のケアの少なさ、および母親の過保護を観た。Bondingでは産後1ケ月のEPDS得点の高いものが愛着形成の損なわれる傾向を認めた。
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