研究概要 |
生活習慣病の発病機序解明と予防対策立案のため、1997年に職域コホート研究(対象者数約11,000人)を発足した。出発時と5年後年に、個人ごとに同意を得て、生活習慣に関するアンケート調査と健診成績のデータベース化、並びに血清保存を行い、血清からは健診にない項目を測定した。今年度は職業性ストレスおよびストレス自覚と安静時血圧との関連性について検討し、以下の結果を得た。 (1)2002年度の職業性ストレス問診結果(男女各々約4,000人と1,000人)から、high strain群、low strain群、active群、passive群の4群間で収縮期と拡張期の血圧を比較した。比較に際して、年齢、肥満度、塩味の好み、運動・飲酒・喫煙の各習慣、睡眠時間、残業日数の8要因を調製した(共分散分析)。男女ともhigh strain群では他3群に比し、収縮期・拡張期いずれの血圧も低値を示したが、有意差はなかった。BMI値25kg/m^2で対象者を層化した結果、BMI<25の男性群では上記傾向が強く、境界有意(p<0.1)であった。 (2)同じ対象群で、ストレス自覚別の4群(少ない・ふつう・やや多い・かなり多い)における多変量調整後の収縮期血圧値は、129.6、128.0、127.7、126.7mmHgと、ストレス自覚の上昇に伴い低下する傾向を示した(傾向性の検定p=0.01)。BMI値で層化した結果、BMI<25の男では、この傾向は収縮期・拡張期血圧共に著明であり(p=0.00)、BMI=>25の男では拡張期血圧が逆の傾向を示した(p=0.04)。 (3)自覚的ストレスが大きい者ほど、仕事の要求度が高い者、及び、裁量度が低い者の割合が有意に上昇する傾向を示した。 以上から、男ではストレス自覚が高いほど安静時血圧値は低値を示し、この傾向は正常体重以下の者で著明であり、肥満者では逆の傾向であった。職業性ストレスは自覚的ストレスに比べて血圧との関係は弱かった。
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