研究概要 |
わが国における医療費は高騰を続け,より効率的な配分が求められている.精神疾患に対する医療費も同様な対策が必要である.これまでに精神疾患に対する医療コストが分析されていなかったことから,政府統計資料をもとに疾病別の意表費,入院費,薬剤費などのコストを算出し,その経年変化を検討した.精神と行動の異常のための医療費は徐々に増加し,2003年には2兆1千億円を超えた.この医療費のうちの約半額が統合失調症のためのものであった.種目別には入院費が最も高く,1兆4千億円となっており,そのうち8千億円が統合失調症のためのものとなっていた. 統合失調症の家族心理教育の効果を医療経済学的に評価した.研究対象は再発リスクの大きい高EE(expressed emotion)の家族と共に生活する統合失調症患者とした.心理教育群は家族が心理教育および集中的家族セッションを受けた者および心理教育とその後のサポートを受けた者,合計30名とし,比較対照群としては過去の著者らのコホート研究での高EE群を選んだ.これら対象者の退院後9カ月間の医療コストを比較検討した.外来医療コストの平均値を比較すると,両群間で有意な差は認められなかった.入院医療コストを比較すると,心理教育群の平均値は27万円で,対照群の47万円よりも小さくなっていた.心理教育群の合計コストは平均50万円で,対照群の71万円よりも小さくなっていた.家族心理教育の再入院予防効果によって,心理教育群の医療コストは対照群と比較して軽減されるとの結論を得た. さらに,費用-効果分析を行った。1再発予防のためのコストを簡便な心理教育群と集中的心理教育群との間で比較した.その結果,簡便な心理教育群の方が費用-効果的となっていた.
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