研究課題/領域番号 |
17390191
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研究機関 | 大阪府立大学 |
研究代表者 |
三野 善央 大阪府立大学, 人間社会学部, 教授 (80181965)
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研究分担者 |
黒田 研二 大阪府立大学, 人間社会学部, 教授 (70144491)
馬場園 明 九州大学, 医学研究科, 教授 (90228685)
下寺 信次 高知大学, 医学部, 准教授 (20315005)
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キーワード | 医療経済学 / 医療コスト / 統合失調症 / 費用-便益分析 / うつ病 / 在院患者数 / ケアマネジメント |
研究概要 |
患者調査資料をもとに過去数十年間の精神疾患患者数の経過を調査した.外来患者は気分障害だけてなく統合失調症においても1980年代以降、増大していた.また在院患者の高齢化が顕著であった.さらに医療コストの疾病別分析を行うと、統合失調症のコストが大きく、また入院医療費の割合が大きかった.経年的に見ると外来患者数の増加を影響はそれほど大きくなく、また新しい非定型抗精神病薬、SSRI、SNRIの発売の影響を少なかった. 在院統合失調症者の退院可能性の関する全国調査の結果、適切な社会資源があれば、40%の統合失調症者が退院可能であることが明らかとなった.精神科医の退院可能判断は、精神症状、社会的機能、当事者の医師を総合的に見たものであった.こうした、患者の退院は少なくとも入院医療費の減少につながるが、彼らの地域での生活の質を保つには、十分な社会資源が必要であり、そのためのコストは無視できない. 統合失調症における家族心理教育の費用-便益を行った結果、簡便家族心理教育の便益が、集中的心理教育の便益を上回っていた.したがって、一般臨床においては、簡便家族心理教育が推奨される.一方、気分障害の家族心理教育では、その再発予防効果は明かであったが、その医療コストへの影響は明らかかとはならなかった.これは、気分障害では再発しても、入院に至らず、外来での治療を継続することによることが大きな理由かもしれない. 精神障害者ケアマネジメントに関しては、集中的に英国イングランドの方法論を検討した.そこでの包括的な実践はわが国での実施に有益な示唆を与えると考えられた.この医療費への影響は、入院医療費を減少させることが期待できるために大きいと考えられるが、有効なケアマネジメントの実践のためにはそのためのコストも少なくないことに注意すべきと考えられた.
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