研究概要 |
●HCVレプリコン増殖細胞では細胞内2本鎖RNAに対する自然免疫系が作動し、Toll-like receptor 3(TLR3)あるいはRIG-Iといった2本鎖RNAセンサー分子によるインターフェロン誘導遺伝子の活性化が想定される。しかし、実際にはレプリコン増殖細胞ではこれらの系は十分機能していない。実際、申請者らの検討では、レプリコン細胞は2本鎖RNA刺激であるpolyICに反応せず、また、IRF3の活性化障害、IRF1の発現低下が認められる。 ●HCVレプリコン細胞においてTLR3およびRIG-I自身およびその下流のTRIF, TBK, IRF3などのシグナル分子の発現を、siRNAおよび強制発現により制御し、レプリコン増殖の変化を解析することにより、HCV増殖に対する自然免疫系の影響を検討した。 ●その結果、HCV増殖細胞においてはRIG-I、MDA-5、およびIPS-1依存性のIRF-3活性化によるISRE活性の抑制が認められた。HCVの各非構造蛋白質を個別に発現させると、これらの抑制活性はNS3/4A蛋白の発現時に認められ、他の非構造蛋白発現では認められないことから、NS3/4Aが自然免疫抑制によるHCV持続感染増殖に関与していることが示唆された。 ●高増殖株であるHCV-Nと低増殖株であるHC-J4を相互に組み換え、増殖力に関与するHCV遺伝子領域を探索するとNS3および3'UTRがHCV-N由来である場合にHC-J4の増殖力が増強することが明らかとなった。HCV-N由来のNS3はIRF-3活性化を強く増強するのに対して、HC-J4由来のNS3はIRF-3抑制活性が弱かった。
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