研究課題
NADPH oxidase 1(Nox1)遺伝子はgp91-phoxの新規ホモログとしてクローニングされた。代表者は消化管上皮細胞に発現するNox1の生理作用について先駆的な研究を進め、胃及び大腸粘膜上皮細胞に発現するNox1は、管腔内病原菌感染により誘導され、胃及び大腸粘膜固有の自然免疫応答ならびに炎症に伴う発がんに極めて重要な役割を果たすことを証明している。平成18年度は、計画に沿って研究を遂行した。まず、Nox1オキシダーゼの活性の調節に重要な役割を担うNoxo1遺伝子のプロモーターを組み込んだpermanent cell lineの樹立に成功した。このcell lineの樹立により、Nox1-based oxidase活性の制御因子の探索と同オキシダーゼを標的とする薬剤の探索が可能となった。大腸上皮細胞株であるT84細胞を用いて、抗炎症性サイトカインによる大腸上皮細胞のNox1の発現抑制機構について検討した。TNF-αは最も強力なNox1-based oxidaseの活性化因子であるが、TGF-βとIL-10は、ともにTNF-αによるNox1の活性化を阻害することを見いだした。そのメカニズムとして、これらの抗炎症性サイトカインはNox1に加えて、TNF-αによるNoxo1の誘導を阻害することを見いだした。現在、そのシグナルについてMAPカスケードを中心に検討している。これらの所見は、大腸粘膜の炎症の制御に、Nox1-based oxidase systemが重要な役割を果たしていることを示唆している。さらに、Nox1ノックアウトマウスを用いて、直腸粘膜のストレス応答を解析した。精神的ストレスモデルとして、隔離ストレスモデルを用いた。マウスを単独で隔離すると、直腸のバネート細胞が消失し、MUC2の発現が劇的に低下した。同時に、Nox1とNoxo1mRNAが増加した。精神的ストレスによるバネート細胞の脱落とMUC2の発現低下はNox1ノックアウトマウスでは見られず、大腸のNox1は大腸粘膜のストレス応答のイニシエーターとして働いている可能性を示した。
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