研究概要 |
胃及び大腸粘膜上反細胞に発現するNox1は、管腔内病原菌感染により誘導され、胃及び大腸粘膜固有の自然免疫応答ならびに炎症に伴う発がんに極めて重要な役割を果たす。まず、モルモットの胃粘膜細胞を用いて、ヘリコバクタ・ピロリ菌のLPSがNox1及びNOXO1遺伝子の発現とRac1の活性化を介してNox1オキシダーゼの活性化をきたすことを明らかにした。ヒト胃にはこれまでNox1は発現しないとされてきたが、独自の抗体を用いた免疫染色法を行い、小腸型、びまん型腺癌ともNox1,NOXO1,NOXA1,p22-phoxが特異的に発現していることを証明した。また、Nox1オキシダーゼが低分化癌細胞では核に局在することを初めて報告した。大腸上皮細胞に発現するNox1については、T84細胞を用いて、IFNγがSTAT1の活性化とGAS(-3818と-3810bp)を介して誘導されること、TNFαは最も強力なNox1オキシダーゼの活性化因子であること、その分機構として、TNFαはAP-1(-561 to-551 bp)を介してNOXO1を最大限に誘導する作用があることを初めて明らかにした。これらの報告はいずれもヒトNox1遺伝子とNOXO1遺伝子の転写に関する初めての報告となった。 遺伝子改変マウスを用いたin vivoの実験については、Nox1ノックアウトマウス、Nox2ノックアウトマウス、及びIL-10ノックアウトマウスを用いた実験を行った。まず、自然腸炎発症モデルマウスであるIL-10ノックアウトマウスでは、Nox1が腸炎発症前から発現が有意に亢進することを見いし、ダブルノックアウトマウスの作成を試み現在解析中である。また、I1-10とNox2のダブルノックアウトマウスのバブルノックアウトマウスの解析も現在進行中である。
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