研究課題
1)ウイルスベクターを用いたSERCA2遺伝子導入ラットの冠動脈前下行枝を結さつし、心筋梗塞を作製した。これによる心不全モデルに対して、低体温・心停止下で冠動脈経由によりアデノ随伴ウイルスベクター遺伝子導入を行った。SERCA2遺伝子に対しβ-gal遺伝子を導入したものを対照群とし、6ヶ月間の発現の後に心機能を検討した。心筋細胞への導入効率は約40%であった。その結果、心エコーによる左室駆出分画は、心筋梗塞を作製しないSham手術群が30%のところ、β-gal遺伝子群が10%と低値であるのに対して、SERCA2遺伝子群は16%と有意な改善を認めた。また、左室機能の指標であるLVEDP、+dP/dt、-dP/dt、tau、Emaxもβ-gal遺伝子群に比べ、SERCA2遺伝子群では有意な改善が得られた。さらに、遺伝子導入6ヶ月後までのラットの生存について評価すると、SERCA2遺伝子群では有意な改善が得られ、SERCA2遺伝子導入による心機能の改善は心筋梗塞によってもたらされる心不全の生命予後を改善させることができると判断された。SERCA2遺伝子導入による心機能、生命予後改善効果の機序を探るため、各実験群の心筋からRNAを抽出し、DNAマイクロアレイを行い、その効果を比較検討した。SERCA2遺伝子導入により、心不全で低下したリアノジン受容体、アクチンやミオシンなどの構造蛋白、ミトコンドリアの電子伝達系蛋白、活性酸素消去系蛋白、プロテインキナーゼ-A、Aktなどの生存にかかわる蛋白などの遺伝子の発現を上昇させることが判明した。さらに、心不全によって増加するコラーゲンなどの線維、アンジオテンシン受容体、エンドセリン-1、カスパーゼ-3など、細胞障害性に作用する蛋白の遺伝子発現を抑制することも明らかになった。すなわち、形態だけでなく、分子レベルでもリモデリングを抑制することが明らかになった。2)SERCA2遺伝子転写活性亢進を機序とする新規心不全治療薬の開発3)ホスホランバン干渉RNA導入によるSERCA2遺伝子の機能亢進平成17年度終了時の報告を参照のこと。
すべて 2006
すべて 雑誌論文 (4件)
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