1)in vivoにおけるオキシトシンの効果の検討:マウス心筋梗塞モデルを用いて、オキシトシン連日腹腔内投与群と生食腹腔内投与群について、梗塞範囲、生存率について比較したが、差は認められなかった。したがって、in vivoにおける心筋幹細胞の分化誘導に関わる因子はin vitroとは異なるかまたは複数の因子が関与していると考えられた。 2)心臓Sca-1陽性細胞株の確立と細胞表面抗原の解析:成体マウスの心臓から磁気ビーズ法によりSca-1陽性細胞を分取して10%牛胎児血清存在下で希釈培養を行い、クローナルに増殖した細胞について継代培養を行い、長期にわたり一定のpopulation doubling timeを有する細胞株を得た。FACSによる細胞表面マーカー解析では、この細胞株はSca-1をほぼ100%発現し、CD29、CD44がほぼ100%陽性、CD34が〜30%陽性、CD45およびc-kitは陰性であり、間葉系細胞のprofileを持っていた。また、PCRによる解析では、心筋転写因子であるCSX/Nkx2.5とGATA4が発現していたが、心筋収縮蛋白の発現は認められなかった。上記の細胞表面抗原の発現の割合は長期継代の過程で変化なく、本細胞株は自己複製能力のある心筋幹細胞株であると考えられた。 3)in vitroにおける心臓Sca-1陽性細胞株の心筋細胞への分化誘導:オキシトシン、FGF、BMP、脱メチル化剤、新生仔rat心筋細胞との共培養、レトロウイルスによるMEF2c遺伝子導入を行ったが、現在のところ心筋細胞への分化は認められていない。今後、さらにWnt、feeder細胞などを試みる予定である。 4)in vivoにおける心臓Sca-1陽性細胞株の心筋細胞への分化誘導:心臓Sca-1陽性細胞株にレトロウイルスを用いて赤色蛍光色素(RFP)を発現させ、マウス心筋梗塞モデルの梗塞周囲に細胞移植を行った。その結果移植4週後にはRFP陽性細胞の一部に収縮蛋白の発現が認められ、in vivoにおいて、心臓Sca-1陽性細胞株は心筋細胞に分化しうることが明らかになった。今後、移植効率の改善と心機能評価を行う。
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