1)心臓side population (SP)細胞の単離と心筋分化誘導 新生仔ラット心臓から酵素消化法により細胞を単離した後に、ヘキスト33342により染色して染色性の低い細胞分画であるSP細胞を分取した。心臓SP細胞の細胞表面マーカーはCD45陰性、CD31低値、CD29高値であり、SP細胞の特徴であるBcrp1遺伝子の発現を認めたが、心筋転写因子遺伝子の発現は認めなかった。SP細胞を培養後、下垂体後葉ホルモン・オキシトシンおよびHDAC阻害薬・トリコスタチンAを72時間作用させることにより、3週間後に約6%が自律拍動する細胞に分化した。分化した細胞は心筋収縮蛋白、転写因子のmRNA、蛋白を発現し、成熟した心筋細胞の性質を示した。 2)in vivo健常心および傷害心における心臓SP細胞の動態、心筋および他臓器への分化の検討 緑色蛍光色素(GFP)を発現する新生仔ラットの心臓SP細胞を、健常ラットおよび心臓に凍結傷害を作成したラットの尾静脈よりそれぞれ移植した。その結果、移植されたGHP陽性心臓SP細胞は健常心筋に比較して、傷害心筋により多くホーミングした。また、ホーミングした心臓SP細胞は凍結傷害部と健常部の境界に選択的に遊走し、移植4週間後には心筋細胞、血管平滑筋細胞、血管内皮細胞、線維芽細胞に生着・分化した。 3)in vitroにおける心臓SP細胞の多分化能の解析 心臓SP細胞はin vitroにおいて骨、脂肪、平滑筋細胞に分化し、多能性幹細胞であることが明らかになった。 4)心臓SP細胞株の確立 限界希釈法により心臓SP細胞の細胞株の確立を試みたが、目的とする細胞株は得られなかった。
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