研究課題
原発性肺高血圧症は原因不明の肺血管収縮による肺血管抵抗の上昇により、右心不全を引き起こす。根治的治療法である肺移植にはドナー不足という深刻な問題があり、内科的治療としてCa拮抗薬、プロスタグランジンI2のような血管拡張療法があるが、薬剤耐性などの問題があり新たな治療法開発が望まれている。血管抵抗を低下させるためには血管径を拡大させるか、血液粘度を低下させるという選択枝がある。本研究では、生体内で抵抗血管として働く細動脈レベル以下の血管において赤血球サイズが血液粘度に影響することに着目し、ヒトヘモグロビンをリポソームで被覆した酸素運搬体Neo Red Cell (polyethyleneglycol-modified LH suspended in physiological saline; Terumo)の効果についてモノクロタリン投与肺高血圧ラットモデルを用いて急性および慢性実験にて検討した。急性実験では50%置換により心拍出量はLH溶液投与により16±2.0から22±2.1ml/minに増加、平均大動脈圧および平均肺動脈圧は不変(58±2.6から60±2.9、49±2.3から50±3.2mmHg)、体血管抵抗および肺血管抵抗は減少し(3.6±0.5から2.8±0.1、2.9±0.4から2.0±0.2mmHg・min/ml)、左室拡張末期圧は上昇した(3.3±2.1から6.6±3.2mmHg)。また、慢性投与では血行動態の改善により肺高血圧時に右心室にて認められるプロテインカイネースCαの形質膜での強発現を抑制し、プロテインカイネースCαのターゲットとなるNa/Ca交換体の活性低下を防ぐことにより心筋細胞内Ca濃度上昇抑制を介して心肥大から心不全発症を抑制することが示唆された。
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