研究課題/領域番号 |
17390231
|
研究機関 | 奈良県立医科大学 |
研究代表者 |
清水 壽一郎 奈良県立医科大学, 医学部, 准教授 (80294403)
|
研究分担者 |
高木 都 奈良県立医科大学, 医学部, 教授 (00033358)
毛利 聡 岡山大学, 医歯薬学総合研究科, 講師 (00294413)
中村 一文 岡山大学, 医歯薬学総合研究科, 助教 (10335630)
宮坂 武寛 姫路獨協大学, 健康保健学部, 教授 (60308195)
八木 直人 高輝度光科学研究センター, 主席研究員 (80133940)
|
キーワード | SPring-8 / X-ray Diffraction / Hypoxia / Myofilament Lattice / Crossbridge / Contraction / Frank Starling Law / Ca Transient |
研究概要 |
臓器としての心臓における各心筋細胞内で分子単位のクロスブリッジ形成過程を評価するべく、ラット摘出心ランゲンドルフ灌流標本を用いて実験を遂行した。本年度までの成果として、左心室自由壁の心外膜側と心室壁中層のクロスブリッジ動態を個別に解析し、収縮期には心外膜側心筋、心室壁中層心筋のクロスブリッジ動態と左心室圧の発生過程が良く一致することを見出した。しかし弛緩期には、心室壁中層のクロスブリッジの解離が、心外膜側心筋に先行することを明らかにしてきた。 本年度も局所心筋クロスブリッジ動態の観察を目的に、ラット摘出心ランゲンドルフ灌流標本を作成した。房室ブロックを作成後、右室心尖部より2Hzで刺激しつつ、左心室内に留置したラテックスバルーンにより左室容積の制御と左心室圧を記録した。左室容積は左室拡張末期圧が0mmHまたは20mmHgとなるように調整した。心臓標本はSPring-8BL40XUのハッチ内にマウントされ、X線が左心室自由壁の接線方向に入射するよう調整した。ある部位での心塞壁X線回折像を2心拍分(1秒間、70画像)記録した後、心臓標本を左室自由壁方向あるいは心室中隔方向に200μmスライドさせ、心室壁を心外膜側から心内膜側までくまなく走査しつつ拍動時のX線回折像を記録した。上記の条件下に、灌流液を100%O2(Normo)もしくは100%N2(Hypo)で通気し、正常酸素下、低酸素下でのクロスブリッジ形成量を比較した。 NormoではFrank-Starlingの法則に従い、前負荷の増大により左心室発生圧およびクロスブリッジ形成量は有意に増大した。一方、Hypoでは、前負荷の増大に伴い左心室発生圧およびクロスブリッジ形成量ともに減少した。前負荷の増大は心筋線維格子間隔を狭め、クロスブリッジ形成確率を引き上げると言われている。Normo、Hypoともに前負荷の増大による筋線維格子間隔の狭小化が確認されている。一方、心筋細胞内CaトランジェントはNormo、Hypoでも変化しないことを確認している。上記の知見より、低酸素化では前負荷の増大に伴いカルシウム感受性が低下している可能性が示唆された。
|