研究課題
基盤研究(B)
心機能制御の中心は自律神経であり、カテコラミン受容体刺激による心筋細胞内cAMPの産生は、カルシウム・収縮関連蛋白のリン酸化を促し、心臓の変時性・変力性を増強する。アデニル酸シクラーゼはカテコラミン受容体刺激を受けてcAMPを産生する酵素であり、9種のサブタイプをもち、申請者らの発見した5型サブタイプは6型とともに心臓型ファミリーを形成する。6型が胎児期に最大発現を示し、5型は成人心筋細胞において最大発現を示すことから、前者は胎児型、後者は成人心臓型と称されている。本申請では、心臓に発現するアデニル酸シクラーゼサブタイプの生理的意義を、ノックアウト動物などの遺伝子操作、サブタイプ特異的作動薬などの薬理学的手法を用いて、心機能制御に及ぼす影響を中心に検討していった。到達目標は、5型サブタイプが心不全発症に重要な役割を果たすこと、5型サブタイプの選択的抑制が心不全・心筋アポプトーシスの発生にどのように関与するか、その分子メカニズムの詳細を検討することである。主として5型ノックアウトモデルを用いて、慢性カテコラミン刺激に対する5型欠損による心筋保護作用の分子メカニズムを中心として検討した。同時に、β受容体・アデニル酸シクラーゼサブタイプ別の共役やβ受容体シグナルのダウンレギュレーションのメカニズムの検討をおこなった。始めに慢性カテコラミン刺激に対する心筋保護作用の分子メカニズムを検討した。いわゆるβ受容体シグナルのダウンレギュレーションは従来受容体レベルでの変化が中心とされたが、ACのサブタイプ発現系がどのように変化するのかを調べたところ、ACサブタイプ特異的な変化が見られることがわかった。とりわけ5型サブタイプはダウンレギュレーションに抵抗性を示し、カテコラミン刺激時の心機能低下の成因となっていることが示唆された。さらにβ受容体とアデニル酸シクラーゼのサブタイプ間の共役もサブタイプ依存性であることがわかった。心筋細胞死に対する反応を比較すると、ACのサブタイプの発現によって心筋細胞死が大きく変化すること、細胞内Aktシグナル系の個別変化が診られることなどがわかった。とりわけ5型ACサブタイプの発現が、心機能調節および細胞の生存性に重要な役割を果たすことを意味することが結論された。
すべて 2006
すべて 雑誌論文 (5件)
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