研究課題
我々は、これまで癌治療にしか注目されなかった放射線(重粒子線)を病態心に照射することで、不整脈基質の原因である電気学的不均一性を改善し、VT/VFの発生を抑制しようとする研究に着手した。我々の研究は、致死性心室性不整脈の予防治療において重粒子線の潜在的有用性を提示した初めての報告である。目的:病態心への照射効果を検討する。対象として24羽のウサギを用い、冠状動脈内へのマイクロスフェアー往入による非貫壁性心筋梗塞(MI)を作成した(MIのない24羽のウサギをcontrolとして使用)。MI作成2週間後、千葉放射線医学研究所のHIMAC加速器を用いて、心臓を標的とした重粒子線照射(Targeted heavy ion irradiation:THIR 15Gy)を施行した。結果:mRNAおよびタンパク解析において、THIRはMIおよびcontrolの左心室におけるCx43発現を亢進した。免疫染色結果では、MIにおいては梗塞周囲の残存心筋でCx43が減少していたが、THIRによって改善した(細胞側面>介在版)。左室前壁の心外膜マッピング生体実験では、MIにおける興奮伝導の遅延が認められたが、THIRによって興奮伝導の回復が認められた。また、MIにおける活動電位回復時間のばらつき(ARID)は増加していたが、THIRによって縮小した。プログラム刺激によるVT/VF誘発率はMIで増加したが、THIRによって抑制された。なおTHIRによる心機能の低下は認められなかった。以上の実験的検討より、梗塞周囲の残存心筋と壊死心筋が混在した領域で異常構築された心筋細胞の電気的不安定性はTHIRによって修飾され、興奮伝導の改善と再分極のばらつきを均一化することで不整脈の誘発性を低下させることが明らかとなった。
すべて 2006
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Cardiovasc Res. 72(3)
ページ: 412-21