研究課題
特発性肺線維症の病態は、進行性の線維化形成に加えて突然に発症する急性増悪と呼ばれる肺損傷があり、予後の悪さを決定づけることが知られている。私たちは肺がん摘出術によって得られた肺組織のなかから、肺線維症を合併している患者肺組織からRNAの抽出に加えて線維芽細胞の培養を行った。さらに線維芽細胞を筋線維芽細胞に分化させてその遺伝子発現の変化を観察した。その結果、線維化病変における多くの線維芽細胞はすでに筋線維芽細胞に分化しており、増殖抑制段階にあることが判明した。現在は線維芽細胞の細胞株をもちいた実験を進行している。さらに組織検体を含めてマイクロアレイ解析の準備を進めている。一方急性増悪患者肺の病態解析としては、急性増悪後の患者における複数回の気管支肺洗浄液中の18種のサイトカイン、および急性肺障害の発症と関連の深いHMGB1の濃度変化を測定した。この結果、急性増悪発症後に大量ステロイド療法を開始することによってほとんどのサイトカインは減少し始めるのに対し、HMGB1は逆に濃度が上昇することが確かめられ、急性増悪病変の原因となりうることが示された(投稿準備中)。これらの傷害性物質の肺胞内からのクリアランスの遅れの原因として、リンパ管の分布異常の可能性に関して免疫組織染色によって検討した結果、肺線維症患者肺においては表層リンパ管系が破壊されていることを見出し、この構造異常もまた急性増悪の原因であることを推察した(投稿準備中)。また、急性増悪様の肺病変を来たす烏インフルエンザ感染に関して、その受容体を肺組織に検索したところ気道にはほとんど分布していないものの肺胞上皮細胞には密に分布し、急性肺損傷となる原因を明らかにした(Nature,2006)。米国の研究施設との共同研究も大学院生を派遣し、積極的に進めている。
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すべて 雑誌論文 (5件)
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