研究概要 |
特発性肺線維症の病態は、進行性の線維化形成に加えて突然に発症する急性増悪と呼ばれる肺損傷があり、予後の悪さを決定づけることが知られている。急性増悪の病態を理解するために急性増悪患者の気管支肺胞洗浄液を集積し、含まれるサイトカインおよびHMGB1の濃度を測定してHMGB1、MCP-1,およびKL6が増加していることを示した。これらの生体物質はいずれも炎症および線維化を促進することが知られていることから、急性増悪による病態悪化を説明するものと考えられる。ステロイドパルスによる治療によってもこれらの物質が肺内に増加をする機序としては、肺胞クリアランスをするリンパ管が消失することによることを見出した。これは線維化病変によってリンパ管が圧排されて消失するものと考えられる(投稿中)。特発性肺線維症患者肺組織における線維化病変には毛細血管が消失する傾向があることを以前示したが(Ebina M, Am J Respir Crit Care Med.2004 169:1203-8)リンパ管も同様に消失する機序として、線維芽細胞から血管あるいはリンパ管新生を抑制する物質が出されていることが推定される。このため線維芽細胞細胞株を用いてTGF-bを反応させて筋線維芽細胞に分化させ、マイクロアレイによってvasohibinをはじめとする血管・リンパ管新生に関連する物質の上昇を確認した。現在はさらに定量化している。また特発性肺線維症患者の生検肺を対象としてこうした物質の肺内の分布を観察し、確かに線維化病態に産生が見られることを確認した。こうしたリンパ管の変化は難治性気管支喘息の気道病変でも同様であり、窒息死した患者肺でもまたリンパ管は消失し、気道上皮細胞の浮腫を継続させる原因となっていることを示した(投稿中)。マイクロアレイを用いた検討はさらに対象をfNSIP患者肺に拡げて検討を行う。
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