研究概要 |
初年度の研究計画に基づき、まずヒト気道平滑筋細胞を培養し、ビメンチン及びalpha-smooth muscle actin(αSMA)陽性であり形態学的にも平滑筋細胞であることを確認した。この細胞由来のサイトカイン、成長因子の包括的な検出を、各種刺激下にhuman cytokine protein array (RayBio)により、約70種類のサイトカイン・ケモカイン・成長因子のタンパク発現を包括的に評価した。その結果、TGFbeta, TNFalpha, IL-8など数種類のサイトカインや成長因子の産生が検出された。これら分子の中には既報のものを含め肥満細胞などに遊走活性を示しうるものがあり、さらに検討を進めている。一方、ヒト気道平滑筋細胞の遊走について、ヒト線維芽細胞及びその分化した筋線維芽細胞myofibroblastと比較しながら、遊走についてBoyden chamberにて検討を行い、とくに後者においてC-reactive protein (CRP)が内因性の制御因子であることを見出した。さらに、遊走の細胞内機構として、ストレス応答性キナーゼの一種p38 mitogen activated kinase (MAPK)のリン酸化が重要であり、CRPがそのリン酸化を抑制することも明らかにした(投稿準備中)。また、喘息の気道においてクロストークが予想されている肥満細胞由来の代表的メデイエーターのヒスタミンに関しては、これら間葉性細胞の遊走を制御することを見出した(投稿中)。今後とくに平滑筋細胞における細胞内シグナル経路について検討をすすめる予定である。気道リモデリングにおいては、気道平滑筋細胞の局所における増殖反応が関与すると推定される。肺線維芽細胞において見出したTh2サイトカインやTGFbetaの調節作用が気道平滑筋細胞においても見られるか否か検討中である。
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