研究概要 |
本研究は、難治性喘息や慢性閉塞性肺疾患COPDなどの難治性の炎症性肺疾患を対象に、抑制性シグナル伝達因子を標的として新規肺再生療法を構築することを目的とする。 気管支喘息の病態にはTh2型サイトカインが関与している。我々は、サイトカインシグナル伝達に抑制性に働くSOCSファミリー分子がこのTh2分化に重要な役割を担っていることを明らかにしてきた。本年度はT細胞内のSOCS分子の作用・発現を人為的に調節することによりTh1/Th2バランスの是正を行った。 OVA特異的T細胞受容体Tgマウス(SOCS3(+/+)xDO11,10)の脾細胞やSOCS3(+/-)xDO11,10マウスの脾細胞からCD4T細胞を分離後に培養し、OVA特異的Th2細胞を誘導した。この誘導Th2細胞に、in vitroで抗原刺激を行ったところ、SOCS3(+/+)xDO11,10マウス由来の細胞に比しSOCS3(+/-)xDO11,10マウス由来細胞からのIFNγ産生の低下が見られた。さらに、誘導したTh2細胞を移入後、抗原OVAを暴露し、喘息反応を惹起したところ、SOCS3(+/-)xDO11,10マウス由来細胞を移入した群では喘息反応の抑制が見られた。以上より、SOCS3遺伝子の制御により喘息反応のコントロールが可能であることが明らかとなった。 さらに、SOCS3-干渉RNA(RNAi)のT細胞内への導入、細胞内導入に用いるPTD(protein transduction domain)というペプチドを付加し変異型SOCSの作製を行った。これらの効果は、次年度で検証する。 一方、慢性閉塞性肺疾患に関しては、肺気腫病変を自然発症するマウスを、C57BL/6系およびBALB/c系と交配してコンジェニックマウスを作製し、骨髄幹細胞移植実験の準備をおこなった。
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