腎臓髄質循環は水・ナトリウムの排泄、したがって血圧調節に重要である。髄質血流は直血管によって調節されている。我々は、直血管に隣接する髄質のヘンレの太い上行脚(mTAL)のNaCl濃度が上昇すると、mTALでスーパーオキサイドが合成されることを示した。また、mTALで合成されるスーパーオキサイドや一酸化窒素(NO)が直血管の血管抵抗を調節する可能性も示し、Tubulo-vascular Crosstalkと命名した。このような調節機序が高血圧や心不全の病態生理に関与することが考えられる。 MGOは糖の非酵素的分解産物であり、糖尿病や腎不全では血中や組織内濃度が上昇している。MGOは最終糖化産物の産生を亢進させることが知られている。そこで、我々は培養内皮細胞でMGOが酸化ストレスを亢進させるかどうかを検討した。新しく開発したスーパーフィユージョンを用い、合成されたR0Sを経時的に測定した。MGOは糖尿病や腎不全で見られる臨床的な濃度で過酸化水素を産生し、ミトコンドリアの阻害薬剤でその亢進は大幅に抑制された。以上より、MGOは内皮細胞において、ミトコンドリア経路を解して過酸化水素の産生を促進しており、心血管病や腎障害の発症に関与する可能性が考えられた。
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