慢性腎低酸素モデルとしてWistar ratの腎動脈狭窄モデル(Goldblattのモデルの応用)を作成し、モデル誘導後3日および7日のタイムポイントにおいてAffymetrixのGeneChipによる網羅的遺伝子発現解析を行い、慢性虚血の時に変動する遺伝子群を抽出した。コントロールに比べ2倍以上に遺伝子発現が増加している遺伝子は、3日目で78個、7日目で188個であった。一方、発現が半分以下に低下しているものは、3日目で26個、7日目で48個であった。これらのうち、虚血状態マーカーの候補遺伝子として選び出したものに関し、様々な腎培養細胞において低酸素刺激での発現の変化の確認を進行中である。 更に、並行して、同様の慢性腎低酸素モデルにおいて、腎臓から抽出した蛋白を2次元電気泳動し、これをコントロールと比較し、変動のあるスポットを切り出してMALDI-TOFF massにより蛋白を同定するproteomicsを行った。低酸素状態は酸化ストレスを誘導することが知られているが、慢性低酸素状態にある腎臓では、paradoxicalにCu/Zn-SODの発現が低下していることが示された。Cu/Zn-SODの発現減少については、蛋白レベルおよび遺伝子レベルにおける確認を行い、更にSOD-mimeticの投与により腎臓の慢性低酸素状態による障害が改善することを確認し、その機能的意義を明らかにした。
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