1)Sall1の遺伝子座にCreリコンビナーゼを導入したマウスの作成 Creにエストロゲン受容体を融合させた蛋白は、エストロゲンに反応してリコンビナーゼ活性を示すことが知られているが、これをそのままマウスに適応すると、内因性のエストロゲンに反応してしまう。そこでエストロゲン受容体に変異を入れ、エストロゲンには反応せず、その合成リガンドである4-ハイドロキシタモキシフェンには反応するものが作成されている。その中でも特に誘導能が強く、マウスでの作動例が報告されているのが、ERT2といわれるもので、これを作成者のフランスのChambon博士から入手し、Sall1のexon2を置換する形でベクターを作成した。ES細胞に導入後、150個程度のクローンを単離し、これをSouthern Blotによってスクリーニングしたところ、3個の相同組み換え体が単離された。これを胚盤胞に注入後、子宮移植し、キメラマウスを作成し、これと野生型メスを交配したところ、ヘテロマウスの誕生が確認された。このSall1CreERマウスが、予想通り作動するのを確認するために、LacZ indicatorマウスと交配させ、Sall1CreER/LacZ indicatorという遺伝子型のマウスを作製した。indicatorマウスはCreの標的であるloxP配列がlacZの上流に挿入され、Creにより組み換えがおこった時のみlacZが発現して、X-gal存在下に青色に発色するものである。Sall1CreER/LacZ indicatorマウスに、4-ハイドロキシタモキシフェンを5日間連続腹腔内投与し、腎臓を取り出してX-galを基質として発色したところ、糸球体、尿細管等で弱いながらも発色が確認された。
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