研究課題
基盤研究(B)
本邦の多発性硬化症(MS)臨床病型として、病変が中枢神経内に播種する古典型MS(CMS)と視神経炎と脊髄炎のみを呈する視神経脊髄型MS(OSMS)が記載されてきた。OSMSは欧米の視神経脊髄炎(NMO)と共通点が多い。NMO/OSMSとCMSの病態を比較した。1.NMO-IgG陽性例と陰性例の比較2004年に我々はNMO/OSMSに特異的に検出される血清自己抗体NMO-IgGを報告した。NMO-IgG陽性例は3椎体以上の長い脊髄病変と失明の頻度が高かった。また長軸方向に長い大脳病変や延髄中心管周囲の病変など特異な脳病変を呈することも明らかになった。2.鋭敏な抗アクアポリン4(AQP4)抗体測定法の確立と各疾患群における抗体陽性率2005年にAQP4がNMO-IgGの標的抗原として同定された。我々は抗AQP4抗体をヒトAQP4をトランスフェクトした細胞に患者血清を添加し、間接蛍光抗体法により検出した。この方法はNMO-IgG検出法より鋭敏で、NMO及びそのハイリスク症候群の約90%の症例で陽性であり、MSその他の疾患では陰性であった。したがってNM0は抗AQP4抗体に関連した疾患でありその病態に直接関与していると考えられる。3.NMO病変におけるAQP4の消失NMOとMSの脊髄病変の病理学的解析により、NMOでは免疫グロブリンや補体が沈着した血管周囲でAQP4が消失していたが、MSの脱髄病変ではAQP4の発現が亢進していた。NMOではミエリン塩基性タンパクの発現はむしろ保持されていた。これらの事実はNMOにおいてAQP4すなわちアストロサイトが病態の標的となっており、MSと根本的に異なる疾患概念であることを示す重要な知見である。4.NM0/0SMSの治療法確立NMO-IgG陽性例で急性増悪期にステロイド無効な症例の半数で血漿交換が有効だった。また長期追跡調査により低容量ステロイド療法が再発率の低下の有効性を見出した。以前からわが国で一部のMS症例でステロイド依存性が指摘されていたが、今回それがNMO/OSMSであることが明らかになった。
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