研究概要 |
孤発性ALSの病態解明、治療法開発には、病態関連分子の発見を出発点としてその分子の動態を把握し、それを反映するモデルシステムを構築することが重要なストラテジーとなりうる。本研究は、レーザーマイクロダイセクション法による脊髄運動ニューロンの単離とcDNAマイクロアレイ解析を組み合わせることにより、我々が同定した運動ニューロン特異的な発現変化をきたす分子を出発点としている。孤発性ALSモデル構築に先あたり、まずこれらの分子のうち、KIAA0231,dynactin1,early growth response 3,acetyl-CoA transporter, death receptor 5およびcyclin Cなどの経時的発現動態を詳細に検討した。様々な病期で死亡した20例のALS脊髄運動ニューロンにおける各々の分子の発現程度をimmunohistochemistryやin situ hybridization上でdensitometryを用いて定量化し、残存運動ニューロン数やリン酸化ニューロフィラメントHを疾患の進行マーカーとして解析を行った。この結果、モーター蛋白質の発現がALSの進行早期より低下していることが明らかとなった。そこで、siRNA法を用いてこの分子の発現減少を培養細胞(SH-SY5Y)に展開することで、孤発性ALSの培養細胞系モデルの構築を目指した。ウェスタンブロッティング、免疫染色によって確実なノックダウン効果を確認した上で、細胞生存率がコントロールに比べて減少していることを見いだした。現在、この細胞障害経路に関して興味深い知見を得つつある。さらに、このモデル系においては蛋白分解処理機構の異常を示唆する所見も得られつつあり、孤発性ALSの培養細胞モデルとして機能しうることを期待している。一方、これらの知見を動物モデルに展開すべく、この分子のコンディショナルノックアウトマウスの作製に着手した。
|