研究概要 |
家族性アミロイドポリニューロパチー(FAP)ATTR V30M(トランスサイレチン(TTR)の30番目のバリンがメチオニンに変異したもの)の肝移植によらない根治治療を確立することを自的として、1.TTRの4量体構造の安定化を図り、アミロイド形成を阻止する治療:Cr^<3+>投与によるアミロイド形成抑制治療、2.アミロイドの伸張反応を抑制し、アミロイド形成を阻害する治療:新たなアミロイド結合物質(trans,trans),-1-bromo-2,5-bis-(3-hydroxycarbonyl-4-hydroxy)stylylbenzene(BSB)の誘導体であるFSBを用いた治療、3.すでに組織に沈着したアミロイドを溶かす治療:異型TTRを抗原とするワクチン治療、4.TTRの産生を完全にシャット・アウトする治療:single stranded oligonucleotides(SSOs)を用いた遺伝子治療、の4つの研究を行った。結果は以下のとおりである。1.Cr^<3+>をFAPMet30の遺伝子を持つトランスジェニックマウスに12ヶ月投与したところ、組織のTTR沈着を若干抑制する傾向が認められた。2.BSBはシンチ作りに向けて、Brの箇所をFに変えたFSBを大量に合成し、組織沈着アミロイドとの反応性を検討したところ、良好な結果が得られた。3.抗体治療に関してはFAP患者を免疫する抗原として特にTTR115-124抗体に注目して組織にTTR沈着が認められたトラスジェニックマウスにこれを投与したところ、TTRの沈着が消失した。4.遺伝子治療ではBNA化したSSOsが肝細胞の培養系で27%の相同組み換えが起こることが確認されたが、投与量や、合成費がヒト応用には多すぎるため、これを効率化するためSingle-stranded DNA expression vectorの開発を行い、かなり良好な結果を収めている。次年度は本プロジェクトの最終年度となるため、さらに研究を進め、特に抗体治療と遺伝子治療に絞りFAPの治療研究をヒト応用可能なものに発展させて行きたい。
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