研究課題
平成18年度までの実験で、カリウムにより誘発されたCSDは脳皮質透過光変化として観察され、カリウム投与中心部付近の1か所から、時には2か所3か所から同心円の渦巻状の広がりが生じること、その際に赤血球は毛細血管から減少あるいは消失し、組織の酸素欠乏状態を周期的にもたらしていること、また脳実質内の細動脈は紡錘形の拡張収縮を繰り返していることを見出した。平成19年度は申請研究計画に沿って、脳虚血初期の毛細血管内赤血球動態観察の実験を行い、大脳皮質拡延性抑制(CSD)の際の所見と比較した。同様の高速カメラレーザー走査蛍光生体顕微鏡と赤血球動態解析ソフトKEIO-IS2^<1)>を用いて、マウス中大脳動脈閉塞に伴う脳虚血部の赤血球とプラスマの変化を観察した。FITCラベルした赤血球は、閉塞直度から著しい減少あるいは消失を示し、一方プラスマトレーサー、FTTC-デキストランの流れはある程度保たれていた。これは酸素の担体である赤血球が著しく減少したということであり、そのために虚血組織はまず虚血初期に酸素不足に陥り神経細胞が脱分極を起こし、細胞膜面での光反射を失しない、既に報告した組織脳皮質透過光変化が増加したものと考えられる。この所見はまさに上記CSDの所見とも一致し、今回の研究で始めて明らかになったことである。従来の研究では血流変化(赤血球+プラスマ)および毛細血管の形態変化のみが検討され、赤血球単独の動きが見えなかったためであろう。以上より急性期の虚血とCSDの発生原因は組織の酸素欠乏という点で共通し、両者の相違は回復期に動脈系の血液供給の再開の可能性にあり、CSDでは回復し、血管閉塞では主要ルートからの供給が断たれているという点にある。しかし一方プラスマ流が残存していることは、虚血部急性期において、治療法に光明が見出されたものともいえる。当研究室で開発した方法はマウスを用いて虚血部の血流、毛細血管再構築観察を長期(最長1ヶ月)にわたって観察し、また虚血病巣の程度もMRI(千葉放医研との共同実験)にて観察を可能とした。
すべて 2008 2007 その他
すべて 雑誌論文 (6件) (うち査読あり 6件) 学会発表 (16件) 図書 (1件) 備考 (2件)
Microcirculation. 15
ページ: 163-174
MVRC 1
ページ: 16-19
ページ: 12-15
Eur J Neurol 14
ページ: 464-466
J Neurochem 102
ページ: 1459-1465
Brain Res 1173
ページ: 84-91
http://web.sc.itc.keio.ac.jp/medicine/neurology/
http://mtomita.jp/home004.html