研究課題/領域番号 |
17390255
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
鈴木 則宏 慶應義塾大学, 医学部, 教授 (10158975)
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研究分担者 |
高橋 愼一 慶應義塾大学, 医学部, 准教授 (20236285)
伊東 大介 慶應義塾大学, 医学部, 講師 (80286450)
伊藤 義彰 慶應義塾大学, 医学部, 講師 (90265786)
冨田 裕 慶應義塾大学, 医学部, 助教 (60276251)
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キーワード | 脳虚血 / 片頭痛前兆 / 皮質拡延性抑制 / 脳微小循環 |
研究概要 |
最終年度は、幾つかの総括的な研究が行なわれた。ラットの自由行動下でのCSDと行動変化の観察を行った。ラット脳にDC potential, EEG両用の電極を頭頂後部および前頭部に装着、後頭部にKC1を投与後、頻発するCSDの出現を確認した後、電極をつけたままラットを自由に行動させて、行動(ビデオ撮影)とDC電位、EEG変化の関連を観察した。ラットは直後一過性に片麻痺を示し、頭位の屈曲、麻痺側への回転運動がみられた。しかし10分ほどして麻痺はほぼ消失し、盛んに動き回りはじめ、嗅ぐ、立ち上がるなどの運動が観察された。しかしCSDは相変わらず発生しており、CSD発生のたびにラットは両手で頭部をかかえるようにしてしゃがみこんでおとなしくなった。やがてDC potential baselineの上昇、EEGの活性化とともに再びラットは盛んに動き回るようになった(1)。一方ラットの頭部固定静止状態の実験も続けた。頭蓋骨の二電極の中間に頭窓を設け、生体顕微鏡でFITCラベルした赤血球の脳微小血管での流れの変化を観察した。CSDが二電極間に伝播する際に、赤血球はCSDとともに減速あるいは消失する傾向が見られたが、一方で高速部分は維持されていて、その速度分布(頻度分布関数)は不均一性を増した(2)。CSDの通過の際に毛細血管の赤血球の数は減少し、これは虚血初期の変化と類似した(3)。細動脈口径の変化は複雑であり、収縮後強度の拡張が観察された(4)。静脈系の血流はほぼ停止まで低下した。しかし血流は、CSD伝播の際に、ほぼ全例増加し、遷延しながら徐々に基戻った。毛細血管での赤血球の一過性の消失は、CSDによる神経細胞の一過性の脱分極によるものと考えられた(5)。CSDが組織の光透過性変化として捉えられることはすでに報告した。この組織光透過性変化の大部分は、細胞膜での脱分極によるものであり、恐らくはグリア細胞の脱分極一細胞腫脹による可能性があることを報告した(6)。
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