研究課題
膵β細胞の進行性減少をきたす遺伝性疾患ウオルフラム症候群の原因遺伝子WFS1は、小胞体ストレス応答のコンポーネントの1つであり、小胞体ストレスから細胞を守る働きを担う可能性が示唆されている。そこで、B6系統のWFS1欠損単離膵島を用い小胞体ストレスによるアポトーシスの誘導を解析したところ、小胞体ストレス惹起物質であるタプシガルギンおよびツニカマイシンに対し、WFS1欠損マウスの膵島ではアポトーシスによるDNA断片化が亢進していた。しかし、小胞体ストレス経路とは異なる経路でアポトーシスを誘導するTNFαとIFN_YによるDNA断片化については、野生型マウス膵島と差を認めなかった。すなわち、WFS1欠損膵島では小胞体ストレスに対する応答が脆弱になっていた。さらにWFS1欠損膵島での小胞体ストレス応答の詳細を検討したところ、PERKのリン酸化を起点とする翻訳抑制、ATF6の活性化やIRE1によるXBP1の活性化に始まるシャペロン蛋白の発現誘導を見出した。また、WFS1欠損膵島では、PERKリン酸化の亢進、XBP1mRNAのスプライシング増強によるXBP1蛋白発現の亢進、ATF6の誘導によるシャペロン蛋白の発現増加が認められ、小胞体ストレス応答が亢進していることを明らかにした。このような小胞体ストレス応答の亢進に伴ってCHOPの発現およびcaspase-3の切断の亢進も認められ、アポトーシスシグナルが活性化されていた。さらに、WFS1欠損マウス膵島およびアデノウイルスベクターによりWFS1蛋白を過剰発現させた膵島の細胞内カルシウム動態とインスリン分泌を検討し、WFS1が小胞体のカルシウムレベルを保持する上で重要な働きをしていることを明らかにした。
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