研究概要 |
2型糖尿病の発症には、インスリン抵抗性とインスリン分泌低下の両者が関与する。私どもはインスリン受容体基質(IRS)-2の欠損マウスを作製し、肥満及び肝臓でのインスリン抵抗性に対し膵β細胞が十分に増殖できないため、相対的なインスリン分泌不足をきたすことにより糖尿病を発症することを明らかにした(Diabetes 49:1880-9,2000、J Biol Chem.279:25039-49,2004、J Biol Chem.280:3331-7,2005)。IRS-2欠損マウスに高脂肪食を負荷すると、野生型に比べ著しい高血糖を示した。野生型では膵β細胞が増殖するが、IRS-2欠損マウスでは膵β細胞の増殖が見られなかった(J.Biol.chem.278:43691-43698,2003)。IRS-2の膵β細胞の増殖における役割を明らかにするため、IRS-2-loxマウスを作製し、膵β細胞にCreリコンビナーゼを発現するマウスとかけあわせ、膵β細胞でのIRS-2を欠損したところ、インスリン抵抗性のない状態でも膵β細胞の面積は野生型に比べて低下していることを証明した(J.Clin.Invest.114:917-927,2004)。さらに、膵β細胞におけるIRS-1,IRS-2の役割を明らかにするため、膵β細胞特異的IRS-1ならびにIRS-2欠損マウスを作製した。現在、これらのマウスに高脂肪食によるインスリン抵抗性の負荷をかけたり、グルコキナーゼ欠損マウスなどのインスリン分泌低下の糖尿病モデルマウスにかけ合わせ、糖尿病の表現型をレスキューできるかを実験している。 693字
|