ウイルス糖尿病の発症機構を解明するために、マウスの特定の系統に糖尿病を誘発する脳心筋炎ウイルス(EMCV)を用いて、まず基礎的な検討を行った。ウイルス糖尿病の発症制御にT細胞やB細胞は必要でなく、抗体は、感染前もしくは感染後一日以内の早期でなければ防御できないことを明らかにした。また、マクロファージを活性化することで防御できるため、感染初期のマクロファージ依存性の防御が重要であると推測された。(論文投稿中) この研究結果から、感染初期反応、とくにインターフェロンレセプター以下のシグナル伝達経路が重要であることが示唆されたため、インターフェロン受容体に会合するシグナル分子であるTyk-2遺伝子に着目して研究を遂行した。EMC-DウイルスをTyk-2欠損マウスに感染させると糖尿病が発症した。Tyk-2欠損マウスでは、膵島細胞におけるウイルス増殖が高く、細胞死が誘導され、インスリン産生が障害されることを確認した。また、血清中のインターフェロンレベルは高いものの、インターフェロンの投与、Poly-I.C.の投与では、糖尿病は誘発されないことが明らかとなった。さらに、Tyk-2欠損細胞では、インターフェロン処理細胞におけるウイルス増殖抑制能が著しく障害されることが明らかとなってきている。 一方、ピコルナウイルス蛋白と相互作用して細胞死を誘導するSiva遣伝子に関して、ウイルス糖尿病感受性系統のSJLマウスにこれまでに報告のないV126Aの遺伝子変異を発見した。この変異が糖尿病発症感受性に直接関係するかどうかを検討すべく、抵抗性マウス系統のB6マウスヘバッククロスを行っている。さらに、膵島β細胞特異的Bcl-xKOマウスでは、軽度の耐糖能障害が認められた。今後、Bcl-family遺伝子の意義についての研究が必要であると考えられるので、さらに研究を継続している。(786字)
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