一側尿管結紮(Unilateral Ureteral Obstruction; UUO)によるマウス腎間質線維化モデルを用いて、炎症・線維化促進因子としてのレプチンの病態生理的意義を検討した。レプチンを欠損するob/obマウスを用いてUUOを施行し、経時的に腎組織像と遺伝子発現を検討した。野生型マウス(WTマウス)において認められる著しい腎実質の緋薄化とマクロファージの浸潤および腎間質の線維化は、ob/obマウスでは著しく抑制されていた。ob/obマウスの腎臓では炎症関連遺伝子であるケモカインやマクロファージマーカー、線維化に関連するTGF-βや細胞外マトリックスの遺伝子発現の亢進が有意に抑制されていた。一方、レプチンの持続投与によりob/obマウスにおいて観察された腎障害抑制効果が消失した。レプチン受容体(Ob-Rb)遺伝子に変異を有するdb/dbマウスにおいても同様に腎障害が軽減していた。摂食量を制限することによりレプチン投与ob/obマウスと同程度に体重が減少したob/obマウスでは、レプチン非投与ob/obマウスと同程度の腎障害が観察された。単球・マクロファージ系細胞あるいは尿細管上皮細胞を用いた培養実験では、いずれにおいてもレプチンは炎症関連分子の遺伝子発現に変化をもたらさなかった。以上より、マウス腎間質線維化モデルにおいてレプチンはOb-Rbを介して炎症・線維化促進をもたらすこと、これがレプチンによる体重減少作用によるものではないことが示唆された。
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