研究概要 |
骨発生後の骨の形成と増加に必須のシグナル系であるLRP5/6-Wnt系をグルココルチコイドが特異的に抑制する知見を得た。この分子機構の解明と個別化医療への応用を目指して以下の結果を得た。 (1)Tcf/Lef遺伝子発現を指標としたWnt canonical pathwayに対するグルココルチコイドの影響を検討し、臨床常用量のグルココルチコイドがWnt canonical pathway(古典的経路)を完全に遮断すること、ヒト骨芽細胞ではDkk-1がグルココルチコイドで誘導されることが明らかになった。 (2)54,675のヒトcDNAを固相化したmicroarrayを用いて、ヒト骨芽細胞のmRNA発現に対する10^<-7>M Dexの影響を解析したところ、39個の遺伝子が10倍以上に発現が上昇、483個の遺伝子の発現が50%以下に低下した。そのうち、Wnt抑制因子であるsFRP群のうち、Dkk-1よりも低レベルであるが、sFRP-1が発現誘導され、sFRP-1もグルココルチコイドによる骨形成抑制の責任分子であることを確認した。 (3)約2,000名の正常対象例よりゲノムを採取、ヒトDkk-1遺伝子を始めとしてWntシグナル系のcanonical pathwayを構成する分子をコードするゲノムのSNPと骨密度の相関解析を行い、sFRP-1のSNPがヒトの骨密度に影響する遺伝因子の1つであることが明らかになった。 以上の結果はLRP5/6-Wnt-β-catenin系(canonical pathway)がステロイド性骨粗鬆症の発症に重要な働きをしていることを強く示唆するものである。
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