研究課題
基盤研究(B)
Evi-1のアイソフォームのうち、Evi-1aは造血細胞の悪性化に深く関与するが、Evi-1cと白血病との関係は明らかでない。同じEvi-1遺伝子から生ずるこの2つの分子が、どのような機構で対照的に機能するのかは不明であった。今回我々は、Evi-1aがホモ多量体を形成するのに対してEvi-1cは多量体を形成しないこと、Evi-1aの造腫瘍性に重要なTGF-βシグナル抑制機能がEvi-1cで著明に減弱していることを示した。この機能の減弱は、Evi-1aと協調してTGF-βシグナル抑制に働くコリプレッサーCtBPとEvi-1cの結合欠如が一つの原因と考えられた。これらの結果より、白血病原因遺伝子Evi-1の造腫瘍性は、そのホモ多量体形成と密接な関係があることが判明した。次に生体内におけるEvi-1の機能を解析するため、Evi-1のexon 4を欠失させたノックアウト(KO)マウス及びexon 4をloxP配列で挟んだコンディショナルノックアウト(flox)マウスを作製した。Evi1-KOマウスは胎生13-16日に出血して死亡し、その胎仔肝では分化した血液細胞は認められるものの、コロニー形成能、造血再構築能は著しく低下していた。また、Evi-1^<flox/flox>マウスをインターフェロン依存的に造血細胞でCreを発現するMx-Cre Tgマウスと交配し、成体造血におけるEvi-1の機能を解析したところ、Evi-1を欠損した造血幹細胞は、長期間の造血を維持できないことが判明した。また、白血病キメラ遺伝子MLL-ENL及びE2A-HLFをEvi-1^<flox/flox>マウスから採取した骨髄に導入し、形質転換後にEvi-1の欠失を誘導すると、その増殖能が低下することを見出した。以上の結果により、Evi-1が造血幹細胞及び白血病細胞の増殖に必須の役割を果たしていることが明らかとなった。
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