研究概要 |
IFN-ζ/limitinは、我々が同定した新種のI型IFNである。IFN-ζ/limitinは、IFN-αやIFN-βと同様に免疫調節作用・抗腫瘍作用・抗ウイルス作用を持つ。しかし、IFN-ζ/limitinはIFN-αと比較して骨髄抑制作用が少ないという特徴を有している。このように、副作用が少ない点において、IFN-ζ/limitinはがん治療薬・ウイルス性肝炎治療薬として既知のIFN-αやIFN-βより優れていると考えられる。残念ながら、IFN-ζ/limitinのヒト型遺伝子はまだ同定されていない。そこで我々は、人工的にIFN-ζ/limitin様ヒトインターフェロンを開発することを目的として、IFN-αとIFN-ζ/limitin間のアミノ酸配列の違いを基に両者の生理活性の違いに関わる責任アミノ酸の決定を試みた。受容体結合部位(ループABやヘリックスCおよびヘリックスD・E周辺)のアミノ酸の中でIFN-αとIFN-βで一致しIFN-ζ/limitinだけが異なるアミノ酸を選びだした。該当するIFN-α1アミノ酸をIFN-ζ/limitinのものに置換した変異IFN-α1を作製した。作製した7つの変異IFN-α1のうちの1つ(m3-IFN-α1)は、変異を持たないIFN-α1と同等の抗ウイルス活性を示すものの骨髄抑制作用(コロニー形成抑制作用)が減弱していた。また、他の変異IFN-α1(m2,m4,m5,m7-IFN-α1)は、全ての生理活性を消失していた。m1,m6-IFN-α1は、変異を持たないIFN-α1と同等の抗ウイルス活性と骨髄抑制作用を示した。m3-IFN-α1に含まれる3つのアミノ酸変異の影響を解析する為に、各々1つのアミノ酸変異を持つm3a,m3b,m3c-IFN-α1を作製した。m3-IFN-α1は変異を持たないIFN-α1と同等の抗ウイルス活性と骨髄抑制作用を示したが、m3b-,m3c-IFN-α1ともに骨髄抑制作用のみが部分的に減弱していた。以上、人工的ヒトIFN-ζ/limitin作製時、重要なアミノ酸を同定した。 IFN-αとIFN-ζ/limitinの生理活性の相違がどのような機序によるかについて解析した。IFN-ζ/limitinはIFN-α/β受容体と結合するが、他の受容体が存在するかは不明である。我々は、IFN-ζ/limitinをbeitとしたツーハイブリッド法にて、IFN-ζ/limitin結合蛋白として1つのII型膜蛋白を同定した。既知のIFN受容体全てがII型膜蛋白であることから、この蛋白がIFN-ζ/limitin受容体としての機能を有する可能性がある。
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