研究課題
細胞傷害性T細胞(CTL)が認識する新たな造血器関連抗原として、CML66とAurora-Aを初めて同定した。まず、CML66およびAurora-Aは、多くの白血病細胞に強く発現しているが、正常細胞には精巣を除いては発現レベルが極めて低いことが分かった。次に、CML66およびAurora-Aのアミノ酸配列から、HLA-A2またはHLA-A24に結合しうると考えられる9merペプチドを合成した。樹状細胞にこれらのペプチドを添加し、自己CD8陽性T細胞を繰り返し刺激し、CML66およびAurora-A由来ペプチド特異的CTLを樹立した。これらのCTLは白血病細胞をHLA拘束性に殺傷するが、正常細胞には全く影響を与えないことが示された。これらの結果から、CML66およびAurora-Aは新たな造血器腫瘍関連抗原として、細胞免疫療法の標的分子となることが明らかとなった。これまでの基礎的研究成果を基に、WT1およびhTERT由来ペプチドを用いたがんペプチドワクチン療法の第1相臨床試験を継続した。GMPグレードペプチドをIFAとともに2週間に一度、最低3回皮下接種した。これまでにグレード2以上の有害事象は認めておらず、一部の固形癌患者において腫瘍縮小効果が得られている。また、赤血球輸血依存性骨髄異形成症候群(RA)、難治性AMLで輸血非依存性になった症例を経験している。臨床効果が得られた症例においては、ELISPOT assayおよびtetramer解析によってペプチド特異的CTLの誘導が確認されている。また、ペプチドワクチン投与中止によって、貧血が進行し、再開によって改善が繰り返し認められたことから、本ペプチドワクチンの臨床効果が確認された。
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