造血器腫瘍に対するがんワクチン療法の開発目的で研究を遂行し以下のことを明らかにした。1)標的抗原およびHLA発現量が同じでもCTLの細胞傷害性に対する感受性が異なることが明らかとなり、その感受性の差が疾患単位で規定されている可能性が示された。2)がん特異的CTL由来TCR遺伝子導入によって、CD8陽性T細胞のみならず、CD4陽性T細胞もHLAクラスI拘束性がん特異性を獲得できることを示した。3)新たな免疫不全マウスを用いて、ヒト免疫系を再構築した"ヒト化"マウスを作成した。4)CD4陽性ヒトT細胞が認識するWT1由来ヘルパーT細胞エピトープを初めて同定した。WT1ペプチド特異的CD4陽性T細胞は、HLAクラスII拘束性に白血病細胞を直接認識し、細胞傷害性を示した。5)細胞傷害性T細胞(CTL)が認識する新たな造血器関連抗原として、CML66とAurora-Aを初めて同定した。6)これまでの基礎的研究成果を基に、WT1およびhTERT由来ペプチドを用いたがんペプチドワクチン療法の第1相臨床試験を継続した。GMPグレードペプチドをIFAとともに2週間に一度、最低3回皮下接種した。これまでにグレード2以上の有害事象は認めておらず、一部の固形癌患者において腫瘍縮小効果が得られている。また、赤血球輸血依存性骨髄異形成症候群(RA)、難治性AMLで輸血非依存性になった症例を経験している。臨床効果が得られた症例においては、ELISPOT assayおよびtetramer解析によってペプチド特異的CTLの誘導が確認されている。また、ペプチドワクチン投与中止によって、貧血が進行し、再開によって改善が繰り返し認められたことから、本ペプチドワクチンの臨床効果が確認された。
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