研究課題
高ずり応力下の血小板血栓形成は、フォンビルブランド因子(VWF)のコラーゲンの結合で開始される。VWFはマルチマー構造をとり、高マルチマーであるほど血小板凝集能が高い。ADAMTS13はVWF切断酵素であり、その欠損症は血中に超高分子VWFマルチマーが蓄積し、血栓性血小板減少性紫斑病を示す。私達は最近、ADAMTS13に特異的な蛍光合成基質の開発に成功した。本法は従来法に比べ迅速かつ簡便で定量性が高い測定法である。本年度は、本法を用いて、地域一般住民3,616名(男性1,687名、女性1,929名)の血中ADAMTS13活性を測定し、性や年齢による変化を検討した。3,616名の平均の活性を100%とすると、男性のADAMTS13活性の平均±SD値は92.9±24.4%であり、最低値38%、median値90%、最大値242%であった。女性のADAMTS13活性の平均±SD値は106.2±27%であり、最低値44%、median値104%、最大値216%であった。女性のADAMTS13活性は有意に男性より高かった(P<0.0001)。この結果から一般住民集団では38%以下の活性を示す人はいないので、病態時にこれより低い活性を示せばADAMTS13活性はその病態の影響を受けていると考えられよう。ADAMTS13活性の年齢(30歳から89歳まで)の影響を調べたところ、男性・女性ともに加齢による活性の低下を認めた(Spearman r=-0.943および-0.829)。ADAMTS13活性は30歳代から50歳代は変わらなかったが、それ以降が加齢とともに低下した。これまで、ADAMTS13活性の測定は数日を必要とし定量性に欠けるものであった。しかし、私達が開発した蛍光合成基質は1時間程度で測定が終了し、定量性のある測定法である。本法を用いて、世界で初めて地域一般住民のADAMTS13活性のデータを収集することができた。本研究で得られたデータはADAMTS13が関与する病態の基盤的データとなり、病態の解明に寄与すると考えた。
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