研究概要 |
われわれは,血小板特異的に発現すると考えられてきたインテグリンaIIbb3がマスト細胞に高発現すること,マスト細胞はSCFやIgEの刺激により活性化するとインテグリンaIIbb3を介してファイブリノーゲンに接着すること,その際マスト細胞の増殖,サイトカイン産生,遊走が増強されることを示した。マスト細胞の関与が知られている皮膚の炎症モデル実験においては,第一相(ヒスタミンが関与)及び第二相(サイトカイン産生が関与)の炎症反応(耳の皮膚の厚さを測定)がインテグリンaIIbの欠損マウスで減弱することを示した。これにより,マスト細胞の反応性にインテグリンaIIbが関与することが,in vivoでも証明された。一方,マスト細胞の局在については,背中の皮膚に存在するマスト細胞数の低下がインテグリンaIIbの欠損マウスで認められたが,耳の皮膚に存在するマスト細胞数に差はなかった。この理由は現時点で不明であるが,インテグリンaIIbがマスト細胞の局在に影響を及ぼしていることは示唆された。また,われわれはインテグリンaIIbがインテグリンaVと競合的にインテグリンb3に結合することを,インテグリンaIIbノックアウトマウス由来のマスト細胞に(レトロウイルス感染を利用した)インテグリンaIIbの再構築実験により証明した。この事実は,インテグリンaIIb欠損状態では,相対的にインテグリンaVb3の発現量が増加していることを意味し,インテグリンaIIbノックアウトマウスの解析にあたっては留意すべき点である。現在,マスト細胞欠損マウスに野生型あるいはインテグリンaIIb欠損マウスの骨髄を注入する実験を行って,インテグリンaIIbがマスト細胞の局在にどのように影響するかを調べている。当該年度の実験により,マスト細胞の関与する炎症やアレルギーの病態にインテグリンaIIbが関与することが証明された。インテグリンaIIbを標的にした局所的な治療への応用も考えられ,本研究における臨床的な意義と重要性が示されたと思われる。
|