これ迄の関節リウマチ(RA)モデル動物を用いた実験で、CDK4/6を阻害するサイクリン依存性キナーゼ阻害因子(CDKI)p16で滑膜線維芽細胞の細胞周期を抑制することはRA治療に効果的であることが明らかである。しかし、CDKIは、CDK酵素活性抑制以外の経路によっても抗炎症作用を及ぼすので、CDK酵素活性を抑制するCDK阻害薬が関節炎を改善するかは明らかではなかった。そこで、我々は、抗ガン剤臨床試験に用いられている汎CDK阻害薬と新たに合成したCDK4/6選択的阻害薬を用いて、その効果を検討した。In vitroでは、双方ともアポトーシスをきたさずに滑膜線維芽細胞増殖を抑制した。この汎CDK阻害薬やCDK4/6選択的阻害薬で、コラーゲン誘導性関節炎を治療すると、関節炎の程度や関節破壊が投与量依存的に軽減した。しかし、II型コラーゲンに対するリンパ球反応や抗II型コラーゲン抗体価には、治療群と非治療群で差がなかった。治療を中止すると関節炎が発症し、コントロールと同程度の関節炎となった。なお、薬剤による治療は、関節炎発症後でも有効であり、臨床での有用性を伺わせた。また、同様の治療効果は、リンパ球不在のRAGノックアウトマウスにK/BxNマウス血清を注入して発症させる血清関節炎でも認められた。しかたって、治療効果発現にリンパ球抑制は必要ないと考えられた。これらの結果は、CDK4/6阻害薬は、リンパ球抑制などの炎症抑制を介さずに、関節炎を抑制することを示すもので、新たな経路で効果を発揮する関節リウマチ新治療薬となることを示している。
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