研究課題
基盤研究(B)
本研究は、GATA1の変異による白血病発症の仕組みを分子レベルで明らかにするために研究を進め、以下の研究成果が得られた。1.変異GATA1と正常GATA1の転写制御の差異を明らかにするために、正常GATA1とエストロゲンレセプター(ER)のキメラ蛋白発現ベクターを作成し、変異GATA1のみが発現しているSCF依存性DS-AMKL細砲株KPAM1に遺伝子導入した。タモキシフェンで正常GATA1を活性化した結果、細胞増殖抑制とKITの発現低下を認めた。2.TMDでは全ての症例で、KITが高発現していた。SCF存在下に液体培養したところ、SCFに反応して著しく増殖し、imatinibでKITの活性を抑制すると、TMDの増殖が完全に抑制された。次に、KITの下流のシグナル伝達系を明らかにするために、SCF依存性DS-AMKL細胞を用いて解析を加えた。SCF添加により、RAS/MAPKとPI3K/AKTシグナル伝達系が活性化し、アポトーシスに促進的に働くBIMの抑制とアポトーシスを抑制するMCL1の誘導が引き起こされた。以上の結果より、SCF/KITシグナル伝達系はTMDやDS-AMKL細胞の生存に重要な働きをしていることが示唆された。3.21番染色体上のTMD責任候補遺伝子の一つであるRUNX1転写因子に注目し、解析を行った。その結果、GATA1がそのzinc fingerドメインを介してRUNX1と結合することを見出した。患者特異的GATA1変異体はそのzinc fingerドメインを介してRUNX1と結合し、GATA1とRUNX1の結合配列を持つ巨核球特異的なGP1bαプロモータ一を相乗的に活性化した。この結果より、DS-AMKLの原因は、GATA1とRUNX1の相互作用の喪失のためではないことが明らかとなった。
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