研究概要 |
1)ヒトES細胞を、胎生14,5~16,5日のマウス胎仔肝由来ストローマ細胞と共培養することにより、赤血球系前駆細胞、骨髄球系前駆細胞、さらには、複数の血液細胞に分化可能な多能性造血前駆細胞に効率良く分化誘導できた。 2)これらのヒトES細胞由来造血前駆細胞は、マウス胎仔肝由来ストローマ細胞と共培養によりヒトES細胞から分化誘導されたCD34陽性細胞分画中に存在し、特に、赤血球系前駆細胞および多能性造血前駆細胞はストローマ細胞との付着細胞として存在したことより、その純化は可能であると推測された。 3)本研究により開発された方法で純化されたヒトES細胞由来赤血球系前駆細胞は、輸血用赤血球の有力な供給源となり得ると考えられた。 4)マウス胎仔肝由来ストローマ細胞には、少なくともヘパトサイトと内皮細胞が混在しており、それらの細胞の協同作用によりヒトES細胞は血液細胞に分化誘導されると推測された。今後、さらにマウス胎仔肝由来ストローマ細胞のcharacerizationを進めることにより、ヒトES細胞から血液細胞への分化誘導を担っている分子を同定し、異種動物のストローマに依存しない、ヒトES細胞からの血液細胞産生法を確立していく必要がある。 5)本研究では、ヒトES細胞から造血幹細胞移植医療に利用可能な造血幹細胞の分化誘導は達成できなかった。しかし、胎生期の二次造血がAGM領域で発生することを考慮すると、今回樹立されたマウス胎仔AGM領域由来ストローマ細胞との共培養により、ヒトES細胞を造血幹細胞へ分化誘導できる可能性は高いと考えられ、今後検討していく予定である。
|