研究課題
超早産(在胎28週未満)で出生した新生児の生存率は着実に向上しているが、超早産で出生した理由により発症する低酸素性・虚血性脳症、慢性肺疾患、未熟児網膜症、成長・発達障害などの重大合併症の発生頻度は低下していない。特に周産期医療に携わる小児科医にとって、超早産児の「後遺症なき生存」をより確実にすることを目指すことは当然であるが、今後はもう一歩踏み込んで、切迫流産・早産を回避して、安定した状態で在胎週数を少しでも長くする方策を開発することも重要になると予想される。本研究の目的は、(A)妊娠の後半期において妊娠を安定した状態で継続させ、胎児の良好な発育を促進する重要因子を明らかにすること、および、(B)病的状態においても胎児、新生児を安定化させ、重大合併症を抑止する方略を明確にすることである。平成17年度の研究業績は以下の通りである。(1)Redox(patho)physiology:母乳は栄養素だけでなく様々な生理活性因子も含有する。われわれは重要な抗酸化因子であるNO、thioredoxin、CoQ10、vitamin Eの母乳中濃度を計測し、それらの出産後変化の特徴を明らかにした。これらの抗酸化因子は出生直後に新生児が必然的に被る酸化ストレスの亢進に対して防御的に作用すると考えられた。(2)Respiratory(patho)physiology:酸化ストレスの亢進は組織・細胞傷害性に作用し、気道や肺での急性・慢性炎症や過敏性を引き起こす。われわれはヒト肺微小血管内皮細胞において、抗酸化剤やNOによるレドックス制御がTNF-alpha/酸化ストレス亢進/NF-kappa B活性化/標的遺伝子誘導の炎症カスケードを効果的に遮断することを示した。レドックス療法が新生児の炎症性肺疾患に対する新たな治療手段の1つになる可能性が示された。また、早産児慢性肺疾患を抑止するための最も有効で副作用の少ない管理方法を明確にした。
すべて 2005
すべて 雑誌論文 (15件)
Free Radical Research 39(3)
ページ: 291-297
Journal of Investigative Medicine 53(4)
ページ: 167-175
Respiratory Medicine 99(5)
ページ: 580-591
Respiratory Medicine 99(8)
ページ: 1068-1069
Early Human Development 81(7)
ページ: 643-646
Trends in Developmental Biology 1
ページ: 65-69
ページ: 77-82
Recent Research Developments in Respiratory & Critical Care Medicine 3
ページ: 37-48
Pediatrics International 47(5)
ページ: 528-531
アレルギー・免疫 12(5)
ページ: 733-737
酸化ストレスマーカー(二木鋭雄, 野口範子, 内田浩二編)(学会出版センター)
ページ: 230-242
臨床病理 53(8)
ページ: 759-767
周産期医学 35(増刊号)
ページ: 474-483
周産期医学 35(12)
ページ: 1671-1679
小児救急の手引き下巻(三河春樹, 松尾宣武, 森川昭廣編)(臨床医薬研究協会)
ページ: 198-208