本研究者らの研究成果を列挙する。 (1)母乳がチオレドキシンなどの抗酸化因子、VEGFなどの細胞増殖因子を高濃度に含有しており、新生児の胎外での適応・発育を補助する作用を有することを示した。 (2)細胞生物学的手法を用いて、一酸化窒素(NO)あるいは抗酸化因子がTNF-αにより惹起される微小血管内皮障害を軽減することを示した。 (3)当施設でのデータに基づいて、小児・成人を対象にした臨床医学における酸化ストレスマーカーの有用性と今後の展望についてまとめた。 (4)L-FABP、GST-πといった腎尿細管への酸化ストレスマーカーが呼吸障害を呈する早産児で増加することを示した。 (5)早産児の気管支肺異形成症の予防・治療策としての早期デキサメサゾン療法についてまとめた。 (6)腎臓におけるNOと生理・病態生理についてまとめた。 (7)生体制御ではL-arginine/NOS/NO系とPRMT/ADMA/DDAH系の均衡が重要であるが、未熟な血管系の緊張維持にPRMT/ADMA/DDAH系が直接的に関与する可能性を示した。 (8)ウイルソン病では酸化ストレスが亢進しており、それが肝障害の程度と相関することを示した。先天性腎尿路異常でも酸化ストレス亢進を示した。 (9)肝内門脈-静脈シャントが酸化ストレス亢進、血管内皮機能不全をもたらすことを示した。 (10)先天性尿素サイクル異常では、OTC異常で血中NO値がアルギニン値に正相関して高く、ASS、ASL異常でADMA値がシトルリン値に正相関して高いこと、特にASS異常ではADMA/NO比が高く血管内皮機能不全が存在する可能性を示した。 (11)血球貪食性リンパ組織球増殖症のトルコ人3歳男児において、Heme oxygenase-1の活性中心でのホモ型ミスセンス変異(Gly139Val)、各種の血管内皮障害マーカー、酸化ストレスマーカーの高値、腎臓・骨代謝障害を見出した。
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