研究課題
DNAメチル化とピストン修飾は、主要なエピジェネティック機構として遺伝子発現に重要な役割を演ずる。小児急性骨髄性白血病(AML)における癌抑制遺伝子p15のDNAメチル化とピストン修飾の関連について、免疫沈降法(ChIP法)とbisulfite法を用いて検討した。結果:正常末梢血および骨髄細胞においては、p15遺伝子のCpG領域は非メチル化状態にあり、アセチル化ヒストンのみが沈降した。p15遺伝子の転写開始点-12から+251までの27個のCpG部位の中で、半数以上がメチル化しているアレルをメチル化アレルと定義すると、AML患者11名中7名(64%)にp15遺伝子のCpG領域のメチル化がみられた。AMLの骨髄細胞におけるp15mRNAの発現量は正常末梢血や骨髄細胞に比べ有意に低下していた(p<0.05)が、DNAメチル化との相関は認められなかった。AML患者の骨髄細胞からはアセチル化ヒストンH3(AcH3)とアセチル化ヒストンH4(AcH4)に加え、メチル化ピストンH3(MeH3K9)が検出された。次いで、ヒストン修飾検出抗体により免疫沈降したDNAにおけるp15遺伝子のCpG領域のDNAメチル化状態をシークエンスにより解析したところ、アセチル化ヒストン(AcH3とAcH4)の中に非メチル化DNAとともにメチル化DNAが含まれていた。また、MeH3K9の中にもメチル化DNAだけでなく、非メチル化DNAが混在していた。これらの結果は正常細胞とは明らかに異なっていた。メチル化DNAと非メチル化DNAの混在が白血病患者の骨髄中に存在する正常細胞の影響である可能性は、正常末梢血細胞とMolt4細胞の混合実験で否定された。以上のことから、小児AMLにおけるp15遺伝子のCpG領域のDNAメチル化とヒストン修飾の調節機構が破綻している可能性が明らかとなった。
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Leukemia 20
ページ: 485
Br J Haematol 134
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Leukemia Res (印刷中)(未定)