研究概要 |
抗Fas抗体刺激によりアポトーシス細胞死が誘導される白血病細胞株を用いて,細胞回転の休止の細胞死誘導への関与を検討した。Phobol Ester処理により細胞回転をG1早期に休止させることにより,抗Fas抗体刺激により誘導される細胞死,およびカスパーゼの活性化は著しく抑制された。この結果は,カスパーゼ-8の活性化がG0/G1期に,カスパーゼ-3の活性化はGO/G1期からearlyS期にかけて誘導されるという結果(平成17/18年度実績)とよく一致していた。 さらに,PI3Kinase/Akt経路と並んで細胞増殖/生存に重要なMEK/MAPK経路に関して,急性リンパ性白血病(ALL)細胞における役割について検討を加えた。MAPKのうち,JNKとp38に関しては,解析した全てのALL細胞において活性化しており,細胞間の差異は認められなかった。これに対して,ERK1/2の活性化は,B細胞系ALL,T細胞ALLともに約30%の細胞において活性化が認められた。さらにMEK1/2活性剤,U0126を用いてERK1/2活性を抑制することによる細胞増殖/細胞死への影響を検討した。その結果,ALL細胞においては,U0I26添加によりERK1/2活性は常に抑制されたが,細胞増殖が抑制され聖る細胞群と,さらに細胞死が誘導される細胞の2群に分けられた。 細胞死誘導受容体を介したシグナル伝達系とPI3 Kinase/Akt系(平成18年度実績),あるいはMEK/MAPK系(平成19年度実績)との関連性の検討は,複数のシグナル伝達系のクロストークによる細胞増殖、抑制の決定機構の解明に結びつく興味ある結果であると思われる。
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