研究課題
基盤研究(B)
脳血管性うつ病(vascular depression: VD)の認知情報処理に関連する脳機能障害と部位を明らかにし、病態に基づいた治療法を開発することおよびVDの存在が脳卒中後のリハビリテーションにおよぼす影響を明らかにして脳卒中患者のリハビリテーションの予後を改善させることを目的として以下のような検討をおこなった。1)脳卒中患者の障害部位と抑うつの臨床症状の特徴との関連、2)VDの長期予後についての検討、3)機能的MRIを用いたVDで認められる機能障害についての検討、4)脳卒中後うつ病とリハビリテーションとの関連。その結果、1)両側の基底核が障害されていた患者ではApathy Scale(意欲低下の程度を示す)の得点が有意に高く、左側前頭領域が障害されていた患者ではZung Self-Rating Depression Scale(抑うつ期分の程度を示す)が有意に高値で,あった、2)VD群ではnon-VD群と比較してうつ病相期間(平均2.6年対1.3年)、入院回数(平均1.1回対0.4回)ともに有意に多く、経過観察期間中に認知症を発症した割合(18%対4%)も有意に高かった。3)言語流暢性課題を用いた。血管障害の有無で比較すると、有意な差は認めなかったが、これまでのうつ病相の回数で比較すると複数回のうつ病相を経験した患者では前帯状回の活性が低下していた,4)脳卒中患者では抑うつ、意欲低下の程度と機能障害の程度と相関していた。以上の結果より脳卒中患者では障害部位の違いにより認められやすいうつ病の症状に違いがあり、左側前頭領域が障害されていた患者で典型的なうつ病症状が、両側の基底核が障害されていた患者で意欲の障害といったより器質的な症状が認められやすいこと、VDではうつ病自体の長期的予後が低く、持続的な器質性の認知障害をきたしやすいこと、老年期うつ病患者の認知機能の低下や脆弱性には血管障害の存在とともにうっ病の再発の多さが関連していること、脳卒中後のリハビリテーションの進行に抑うつが影響を及ぼすことが明らかとなった。
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