【はじめに】我々は、赤ん坊の「笑い」「泣き」顔を提示した時の、統合失調症者および健常者の視覚認知機i能を探索眼球運動で、脳内活動は扁桃体に注目しfMRIにて検討してきた。今回、視覚認知機能を最も反映する念押し課題を用いて同一被験者において探索眼球運動とfMRIを計測し検討したので報告する。【対象】統合失調症者(12名)と年齢をマッチさせた健常ボランティア(12名)を対象とした。統合失調症者は総て服薬中で、精神症状は、PANSSで評価した。総ての被験者に書面にて研究の内容を説明し同意を得た後計測を施行した。尚、当研究は久留米大学倫理委員会の承認を得ている。 【方法】探索眼球運動は、アイマークレコーダーを用いて赤ん坊の「笑い」「泣き」写真を注視してもらい、念押し課題にて観察された10秒間の注視点総移動距離と注視点総数を解析した。fMRI検査は、1.5TのMRIを用いて50秒間に10回の全脳撮影を刺激有りと刺激無し時間を交互に与え行った。解析はSPM2を用い念押し課題における賦課部位を検討した。【結果】探索眼球運動の総移動距離および注視点総数は、「笑い」条件でのみ、統合失調症者群が健常者群より有意に短縮した。健常者群でのみ、総移動距離および注視点総数は、「笑い」条件が「泣き」条件より有意に増大した。fMRIでは、「泣き」条件で、健常群では扁桃体が賦活されたが、統合失調症群では賦活されなかった。「笑い」条件で、統合失調症群では左扁桃体は賦活されたが、健常群では賦活されなかった。「泣き」条件で、健常群では右前帯状回が賦活されたが、統合失調症群では左前帯状回が賦活された。「笑い」条件で、健常群では左右前帯状回が賦活されたが、統合失調症群では賦活されなかった。【考察】統合失調症者における扁桃体の異常な反応は前帯状回が関係している可能性が示唆された。今後、症例数を増すとともに同時記録が必要であると考える。
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