研究概要 |
重イオンがん治療用超小型直接プラズマ入射線形加速器のためのイオン源の研究として,東京工業大学における既存のYAGレーザーを使用した,新しい小型レーザーイオン源を製作した。これは世界で初めてIH型線形加速器に対して直接プラズマ入射法を適用するものであり,既存のAPF-IH型線形加速器と組み合わせて,陽子ビームの加速実験をおこなうために使用する。その製作にあたっては,本研究の代表者らによる平成15〜16年度の本補助金・基盤研究(B)(2)「APF型小型ガン治療装置の研究」において,RFQ型バンチャー空洞とともに開発がおこなわれた,炭素6価イオン用レーザーイオン源の設計を参考にした。製作したイオン源のビーム特性については,理化学研究所における既存のイオン源テストベンチを利用し,ビーム強度や電荷分布などの測定をおこなっている。これらイオン源に関する研究成果については,平成17年にフランスで開催されたイオン源国際会議(ICIS2005)のなかで報告をおこなった。 また,レーザーイオン源用のターゲット材料の開発と真空系の検討については,本研究課題の海外共同研究者が所属するルーマニアのサピエンタ大学とペトロマイオ大学と共同でおこない,その技術打ち合わせのために両大学に出張した。そして,来年度は前述のものとは別の既存のYAGレーザーを,サピエンタ大学の国際物理研究施設に輸送し,プラズマ分析装置を組み立てて共同実験をおこなう予定である。 重イオンがん治療用線形加速器の小型化・大強度化の研究としては,既存のAPF-IH型線形加速器の加速電場強度を向上させることを考え,加速電極ギャップとベース電極の形状を変更し,3次元電磁場シミュレーションにより,加速電圧分布と共振周波数の解析をおこなった。また,ビーム軌道計算もあわせておこない,その結果を加速空洞の解析作業にフィードバックすることで,空洞性能とビーム加速性能の最適化を図った。その研究成果は,平成17年に米国で開催された粒子加速器国際会議(PAC'05)のなかで報告をおこなった。
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